古代マケドニアの息吹を感じる旅:ペラ遺跡訪問記

ギリシア旅行記

古代マケドニアの息吹を感じる旅:ペラ遺跡訪問記

ギリシャ第二の都市テッサロニキ。そこから北西に約38km離れた田園風景の中に、ペラ遺跡が静かに佇んでいます。

ペラ遺跡は古代マケドニア王国の栄華を物語る場所であり、東方遠征で知られるアレクサンドロス大王の誕生地でもあります。

古代史ファンとしては見逃せないこの地を、2018年10月16日に訪問しましたので、今回はその様子をご紹介します。

テッサロニキからペラへ

ペラ遺跡観光に際して、ガイドブックや旅行サイトのおすすめに従ってテッサロニキを拠点としました。

この後のギリシア旅行全体を通して、ギリシア国内の長距離移動にはKTELという会社のバスを主に利用しました。

テッサロニキのマケドニア・バスターミナルの19番乗り場から14時のバスに乗り込みました。

チケット代は片道4.1ユーロ(2018年10月当時)。

実は前日の深夜にアテネ空港に到着し、早朝の電車でテッサロニキまで移動してきたのですが、古代史の舞台に近づく高揚感で疲労はかき消されていました。

アテネ→テッサロニキ間を乗車した鉄道(筆者撮影)

バスは14時45分に目的地に到着しました。

ここから遺跡や博物館まではそれぞれ1km以上の距離があり、徒歩での移動が必要です。

気合を入れて歩き出そうとしたところ、同じバス停で降りた地元の女性に声をかけられました。

彼女は博物館の近くに住んでおり、迎えの車が来ているので一緒に乗らないかと親切に提案してくれました。

もちろん、海外でのこうした申し出には慎重になるべきですが、今回はありがたくその好意に甘えることにしました。

車での移動は早く、すぐに博物館に到着しました。

親切な女性たちに何もお礼をしないのもどうかと思い、「This is Japanese candy.」と持参していたパイン飴をプレゼントしました。

予想以上に喜んでもらい、人の温かさに触れる瞬間となりました。

ペラ博物館

博物館の入場料は遺跡との共通券で8ユーロ。

当時大学4年生だった私は国際学生証を持っていたので、半額で入場することができました。

入館してすぐに、アレクサンドロス大王の頭部の石像が目に飛び込んできました。

アレクサンドロス大王頭部像(筆者撮影)

遺跡から発掘されたモザイク画や出土品も数多く展示されており、古代マケドニアの歴史が生き生きと蘇ります。

博物館を堪能した後、次は1km離れた遺跡へと向かいました。

道沿いには家々や学校が並び、古代の強国の王都があったとは思えない、のどかな田舎町の風景が広がっていました。

ペラののどかな街並み(筆者撮影)

広大なペラ遺跡

遺跡に到着し、共通券を見せて入場。

事前に抱いていたイメージは、王宮跡がぽつんとあるだけのもの。

しかし、そこに広がっていたのは広大な遺跡群でした。

草地の中に残る礎石や柱、そして野晒しにされた遺構。

ペラの遺跡群(筆者撮影)

遺跡のあちらこちらに散らばるモザイク画は屋根で守られており、色褪せてはいるものの描かれた神話の場面が目を楽しませてくれます。

そして、完全に形が残った六本の円柱と崩れた柱たちが並ぶ王宮跡。

その前に広がる菱形のモザイクの床。

ペラの王宮跡(筆者撮影)

青空を背景にしたそれらは、古代マケドニア王国の遺跡に相応しい美しさを誇っていました。

アレクサンドロス大王やその父フィリッポス二世がこの地で生き、王国の政務を執り、麾下の将兵を鼓舞し、戦に赴いた場所。

その同じ場所に自分が立っているという実感。

これより先のギリシャ旅行でも何度も感じることになるであろう、歴史との繋がりを強く感じました。

静寂の中で感じる贅沢な時間

これほどの遺跡でありながら、その時の観光客は私一人。

好きなだけ眺め、好きな場所で思う存分に写真を撮ることができるという贅沢な時間を堪能するため、遺跡全体をじっくりと散策してみることにしました。

入口から向かって右側の奥には”アフロディーテの聖域”と呼ばれる場所があり、気になって向かってみました。

屋根で保護された場所にはほとんど何も残されていませんでしたが、中央に小さな穴を発見。数段の階段があり、下ってみると大量の虫がたかっていました。

”アフロディーテの聖域”(筆者撮影)

王宮近くの聖域、それもオリュンポス十二神の一柱である美の女神アフロディーテのものとあれば、古の時代には人々の尊敬を集めていたのでしょう。

しかし、崇める人がいなくなればそれも荒れ果ててしまう。

それがいつからなのかはわかりませんが、古代マケドニアの中心地がテッサロニキに移った後なのか、それともキリスト教が台頭してきた後なのか。はたまた、もっと別の時期なのか。

悲しくもありますが、遺跡とはそうしたものなのでしょう。

旅の終わりに

しばらくの間遺跡を楽しんだ後、バス停に向かいました。

左右に畑が広がる一本道を歩いていくと、時折車は通りかかるものの、歩いているのは自分一人です。

そう思うと、1kmの道のりもなんだか楽しくなってきました。

バス停は行きと同じ場所。時刻表がありましたが、ギリシャ語が読めないため全くわかりませんでした。

行きはマケドニア・バスターミナルでチケット売り場の方に聞けましたが、ここは無人のバス停。

少し不安を感じましたが、待っていれば来るだろうと腹を括って待つことにしました。

しばらくすると、現地の人らしい青年に声をかけられました。

彼もテッサロニキに向かうらしく、16時半頃にバスが来ると教えてくれました。

色々と話しかけてくれましたが、自分の拙い英語力ではうまく会話が続きませんでした。

そうこうしているうちにバスが来て、行きと同じ4.1ユーロを支払いました。

バスの中で流れていたどこか物悲しい音楽が、遺跡からの帰り道にぴったりと合っていました。

17時10分頃にマケドニア・バスターミナルに到着。

それから歩いて宿に向かい、その日の行程を終えました。

ペラ遺跡で感じた古代史の息吹と、人々の温かさ。ギリシャ旅行の最初の地として、心に深く刻まれる訪問となりました。

これからも続く古代の旅路に思いを馳せながら、テッサロニキの夜は静かに更けていきました。


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