訪問日:2018年10月27日
クレタ島から夜行フェリーに乗り、アテネに戻ってきたその足で国立考古学博物館に向かった。
ギリシア中の重要な発掘品が集められた、古代のロマンに溢れた考古学博物館。
朝早く7時48分に入館し、学割が効いて5ユーロで入場できた。驚いたことに、国際学生証ではなく日本の学生証で学割が適用された。
約3時間にわたって館内を見て回った中で、特に注目した展示物を9点、紹介する。
アガメムノンのマスク
トロイア遺跡の発見者として知られるシュリーマンが、ミュケナイ遺跡(現在のミケーネ)で発見した金製の葬儀用仮面である。
シュリーマンはこれをトロイア戦争のギリシア軍総司令官アガメムノンのものと信じて「アガメムノンのマスク」と名付けたが、実際にはトロイア戦争よりも前の時代のものである。
そういうわけで、ギリシア神話のアガメムノンとは直接関係はないとわかってはいるのだが、やはり名前がついているとどうしても連想し、神話好きの血が騒いでしまう。
この後に訪問したミケーネの博物館にも展示されていたがそちらはレプリカで、本物はこのアテネの国立考古学博物館に展示されていたものだ。
キュクラデス文明の石像
エーゲ文明で最初に栄えたキュクラデス文明の石像たちも展示されている。
クレタ島のミノア文明よりも古い時代に栄えたこの文明の石像は、後の古典期の彫像と比べると精巧さ、再現度には欠けるものの、独特なかわいらしさを持っている。
イノシシの牙の兜
イノシシの牙を薄い板にして組み合わせて作られた兜。
トロイア戦争を描いたホメロスの『イリアス』で、ギリシア側の将軍オデュッセウスが「イノシシの牙の兜をかぶっていた」という描写があるが、ずっとイメージが湧いていなかった。
今回実物を見たことで、「こういうことか!」と納得した。
古代の劇場の仮面
ギリシア悲劇や喜劇で用いられた仮面も展示されていた。
拡大モニター等ない時代、遠くからでも見えるよう、実際の人間の顔より大きく、目鼻口のパーツも大きめに作られているのが特徴である。
アフロディーテとパン
美の女神アフロディーテと彼女に迫る牧神パンの石像も展示されていた。
アフロディーテの肩には愛の神エロスも見える。
残念ながらGoogleの規約上、石像であっても裸体の写真を掲載することはできないが、美術的な観点から素晴らしい作品であった。
ミノタウロスの石像
手足や角は失われているが、牛頭人身の姿は間違いなくミノタウロスである。
この石像を前にすると、完成当時はどのような姿だったのか、どのような場所に、どのような意図で飾られていたのかと想像が膨らむ。
ギリシア神話の怪物好きとしてはたまらない彫刻である。
アンティキティラの機械
アンティキティラ島近海の沈没船から発見された古代ギリシャの遺物で、複数の歯車から成る精巧な作りからオーパーツとして名高いものである。
天体運行を計算するための装置という説が有力で、アルキメデスやその後継者によって作られた可能性もあるという。
古代ギリシャの技術力の高さに驚かされる。
ヴァルヴァキオンのアテナ像
知恵の女神アテナの石像で、かつてパルテノン神殿にあった巨大なアテナ像の忠実なレプリカである。
右手には勝利の女神ニケを乗せ、左手には盾を持ち、その裏には蛇が隠れている。
盾には英雄ペルセウスに討ち取られたメデューサの首がはめ込まれている。
パルテノン神殿にあったオリジナルの像は歴史の流れの中で失われてしまったということで、残念でならない。
大理石で作られた貝殻
大理石を削って作られた貝殻も展示されている。
極論、本物の貝殻を拾ってくれば済むのに、わざわざ彫刻で作るところに職人の情熱を感じる。
終わりに
その他にも、ゼウスやポセイドンなどの神々、英雄、怪物の彫刻や装飾品がたくさん展示されていた。
ギリシア神話ファンにとっては、どの石像がどの神や英雄なのかを当てるだけでも楽しめる。
ギリシア神話にはそれほど興味がない人でも、美しい古代ギリシアの美術に触れる絶好の機会である。
ぜひ一度訪れてみてほしい。
参考文献
地球の歩き方 A24 ギリシアとエーゲ海の島々&キプロス 2019-2020
コメント