ハワイ神話って何?

ハワイ神話

日本人に大人気の観光地、ハワイ。山や海、きれいなビーチを楽しむ最高のリゾート地、というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?

私も2023年6月、妻と2人でオアフ島に新婚旅行に行ってきました。

ワイキキビーチ(筆者撮影)

コロナ禍明けで久しぶりの海外旅行にただでさえワクワクしていましたが、その旅行を更に充実させたいと思い、自分の好きな神話について勉強していきました。

これまで触れたことのなかったハワイ神話でしたが、調べてみると様々なエピソードで構成された、面白い神話であると感じました。

更に調べていく中で、ハワイ神話はフラやお祭りにも影響を与えていることがわかりました。ということは、ハワイ神話を知れば旅行を更に深く楽しむことができること間違いなしです!

そこで、何回かに分けてハワイ神話についてご紹介したいと思います。

ハワイ神話は難しい?

いきなりですが、ハワイ神話は興味深い物語群であるとともに、1つの物語として解説することはなかなかに大変だ、とも私は感じました。

なぜそう感じたか?を自分なりに分析したところ、その理由は大きく3つある、そう思いました。

1.神話の多様性

ハワイ諸島は132もの島々から成り立っており、1810年にカメハメハ大王によって統一されるまではそれぞれの島、いや島の中でもそれぞれのコミュニティが独立を保っていたため、伝えられている神話も地域ごとに少しずつ差異があります。

ハワイ諸島の3DCG図(出典:ハワイ諸島 – Wikipedia

このため、同じ神であっても逸話によって出自や設定が異なる場合があります。

ハワイ神話の重要な資料としては19世紀に文字化された叙事詩”クムリポ”が挙げられますが、このクムリポ内でも異なるエピソードが伝えられている場合すらあります。

2.多神教の複雑さ

ハワイ神話は多神教であり、多くの神々や英雄が登場します。

これらの神々や英雄たちの物語が、先述の理由により更に地域ごとに異なった形で伝えられているために、エピソード同士が相互に矛盾したり、つじつまが合わなかったり、といったことが起きています。

そもそも時系列的につながっているとも限らない個々のエピソードを包括的に1本の線で描き出すこと自体が非常に困難だと言えます。

3.日本人になじみが薄い

しかし、1.神話の多様性、2.多神教の複雑さでいえば、日本神話や日本でも広く知られているギリシア神話も条件は同じはずです。

ではなぜ、それらの神話に比べてハワイ神話の解説が難しいと感じたのでしょうか?

それは、ハワイ神話がいまだ日本人にとってなじみが薄く、整理が進んでいないからではないか?私はそう考えました。

日本神話はもちろん自分たちの神話であり、ギリシア神話や北欧神話は知名度が高く、関連書籍やYoutubeでの解説も多数出ています。

そういった解説が積み重ねられる中で、ここが主要な部分でこっちは枝葉の部分、といった整理が進んでいます。

またゲームや漫画の題材とされることも多いため、エピソードや登場する神、英雄、怪物の知名度も高く、取っつきやすさもあります。

それに対し、ハワイ神話はどうでしょうか?

ハワイ神話の神を答えて、と言われて、ぱっと出てくるでしょうか?

「えーと、ギリシア神話の最高神はゼウス、北欧神話はオーディン、日本神話はアマテラスオオミカミ、だけどハワイ神話誰だっけ?」

日本人の多くがこの状態でしょう。何を隠そう、私自身も今回調べるまで、ハワイ神話については全く知りませんでした。

本やYouTubeで解説される機会が多ければ、その分だけ整理されていき「なるほどね、この順番でこのエピソードを解説していけばストーリーとして話せるのね」というのがわかるようになっていますが、逆に触れられることの少ないハワイ神話ではそのあたりが整理されていないため、自分でまとめ直す必要があります。

これこそがハワイ神話解説が難しいと感じた最大の理由ではないかと、私は分析しました。

またこれもあくまで私の推測なのですが、ハワイ神話が日本であまり知名度・認知度が高くないのは、欧米とは別の文化圏の神話だからではないか?と思います。

ギリシア神話はキリスト教とともにヨーロッパ文明の根源と言える存在であり、

古くから絵画や彫刻の題材ともされてきたため、明治維新以来、欧米の影響を強く受けてきた日本人の間で認知度が高いのは納得がいくところでしょう。

北欧神話はヨーロッパ人の一派、ゲルマン人の神話であり、現在のヨーロッパ文明の根源をキリスト教、ギリシア神話、そしてゲルマンの文化に求めるという考え方に立つのであれば、北欧神話もまたヨーロッパ人のルーツ、アイデンティティの一つであり、それゆえに日本でも広まったのではないかと思います。

一方ハワイは、18世紀後半にジェームズ・クック船長が上陸するまでヨーロッパ文明との接点がなく、その後も日本からハワイに移民することはあっても、その逆はあまりなかったことから、日本文化に影響を与える、ということはありませんでした。

たしかに、現在ハワイは観光地として人気ですが、山や海、綺麗なビーチを楽しむリゾート地としての印象が強く、遺跡目当てで行くとか、歴史や神話の舞台を見に行くとか、そういう目的の旅行は少ないかもしれません。

それゆえにハワイ神話は日本であまり知られていないのではないか?私はこう考えました。

ハワイ神話の整理と再構成

では、知名度が低いからハワイ神話が面白くないのか?と言えば、決してそんなことはありません。

登場する個性豊かな神々の多彩なエピソードも面白いですし、英雄の冒険譚や怪物退治の逸話もあります。

また食や習慣など、ハワイの文化やハワイ人の考え方を神話の中から読み取ることができるのも、非常に興味深いです。実際にハワイに行った際、「あれ、もしかしてこれはあの神話に関係するのかな?」なんて考えれば、旅行に深みが増すことでしょう。

そこで、ハワイ神話をなるべく一本のストーリーとしてお話できるように再構成してみました。

まずは世界の始まりから始め、次に神々の物語、そして最後に英雄たちの物語という順序で進めていきます。以前の記事「ギリシア神話って何?」でもご紹介した、ギリシア神話の構成を参考にした形ですね。

ただしハワイ神話のエピソードには複数のバリエーションがあるため、それぞれ1つを選びつつ、異説も紹介するという方法を取っていきたいと思います。

ハワイ神話とポリネシア神話の関係

ここでもう一つ、ハワイ神話を語る上で欠かせない要素が、ポリネシア神話との関係です。

ポリネシアはハワイ、ニュージーランド、イースター島で囲まれた三角形の海域で、2000以上の島々が点在しています。

ポリネシアの地図(出典:ポリネシア – Wikipedia

ポリネシアの島々の文化や風習、言語は非常によく似ており、神々や英雄も共通しています。

例えば、ディズニー映画「モアナと伝説の海」にも登場したハワイ神話最大の英雄マウイは、ポリネシア全体の英雄でもあります。

ハワイ人は元々ポリネシアの南太平洋地域から移住した人々の子孫であり、3世紀から5世紀ごろにマルキーズ諸島から、7世紀から8世紀ごろにはタヒチから移住してきました。

こうして、元々信仰されていた神々がもたらされ、ハワイ独特の要素が取り入れられた結果、ハワイ神話が生まれたとされています。

終わりに

ハワイ神話は他の神話に劣らず多彩なエピソードが残された、興味深い神話です。

次回以降、実際の神話をご紹介することでハワイ神話を知っている日本人が少しでも増えれば嬉しく思います。

参考文献

『地球の歩き方 ハワイ島 2024~2025 (地球の歩き方C ハワイ南太平洋オセアニア)』 地球の歩き方編集室(2023年/地球の歩き方)


C02 地球の歩き方 ハワイ島 2024~2025 (地球の歩き方C ハワイ南太平洋オセアニア)

『地球の歩き方 ハワイ オアフ島&ホノルル 2024~2025』 地球の歩き方編集室(2023年/地球の歩き方)


C01 地球の歩き方 ハワイ オアフ島&ホノルル 2024~2025

『やさしくひも解く ハワイ神話』 森出じゅん著(2020年/株式会社フィルムアート社)


やさしくひも解く ハワイ神話

『ハワイの神話 モオレロ・カヒコ』 新井朋子著(2009年/株式会社 文踊社)


ハワイの神話 モオレロ・カヒコ

『ハワイの神話 モオレロ・カヒコ2』 新井朋子著(2014年/株式会社 文踊社)


ハワイの神話2 モオレロ・カヒコ
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